2016年月報8月号巻頭言「現代からの解放」

あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している。しかし、必要なことはただ一つだけである。(ルカによる福音書10章41~42節)

夏期休暇に家族でヨセミテ国立公園に行ってきました。日常から離れた大自然の魅力は言うまでもなく、素晴らしいリフレッシュの時を過ごすことができました。しかし、日常から離れた生活を手に入れても、現代文明から離れた生活を手にすることはなかなかできません。気がつけば、私は片手に絶えずスマートフォンを握りながら、子供たちの写真を撮影し、時にはFaceboookを見たりして、日常から離れた大自然の中でも現代文明を手放せずに過ごしていたのでした。

現代は、インターネットができるスマートフォンに対する依存度が高まっています。それは、依存症の一つであると言われるほどです。暇さえあれば、無意識にスマートフォンを手にしてしまう。そんな人も少なくないと思います。もちろん、私もその一人です。

しかし、そんな私を戒めるかのような出来事が起こりました。私はヨセミテに行った初日、うっかり川にスマートフォンを落としてしまったのです。電源はつかなくなり、その旅行中は必然的に身近にあった現代文明から引き離される生活を送ることとなりました。初めはショックでした。電源がつかないスマートフォンをつい手にしてしまう瞬間もありました。しかし、スマートフォンがない生活は、私の手と目を解放させ、大自然の恵みに、より注意を向けさせたのです。それは、なんとも言えない解放感に満ちた瞬間でした。

スマートフォンが身近にある生活は便利です。しかし、絶えず何かに縛られている感覚を覚えることも事実です。絶えずメールを気にしたり、必要もないのにインターネットを眺め続けて、時間を浪費してしまうこともあるのです。

しかし、その誘惑から解放された時にこそ、私たちは本当に何ものからも自由にされた、自然体の自分を取り戻すことができるのだと感じました。皆さんも、時には現代文明から解放された生活を心がけてみてはいかがでしょうか。私たちが生きるために本当に必要なことは何であるのか。その問いと真正面から向き合うことができるかもしれません。

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